三田紀房氏といえば、東大に入るための受験技術が満載の「ドラゴン桜」、中学生が大金を運用する「インベスターZ」などで有名な漫画家です。
その三田氏が、自分の仕事術を明らかにしたのが「徹夜しないで人の2倍仕事をする技術」。読んでみると、すごく効率的な仕事の進め方をしており、漫画だけでなく一般的な仕事にも応用できるノウハウが満載です。
三田氏の作品については読んだことがあったのですが、漫画を始めたのは30歳のとき。しかも、お金のためと明言されています。へえ、意外だな。
なるほど。最初からどっぷり漫画の世界に浸りこんでいなかったため、冷静に漫画業界を見ることができたというわけですね。だから、業界の慣習にとらわれず、新たな視点で作業の改革に踏み切ることができたんでしょう。
徹夜ゼロを実現
漫画を描くというと、どんなイメージを持たれますか。資料が山積みされた仕事場でたくさんのアシスタントに囲まれ、締切に追われている。締切前は徹夜が当たり前。お菓子の食べ過ぎで太り気味、健康管理なんて二の次、なんていうのが、一般的なイメージではないでしょうか。
最初の頃は三田氏も徹夜で凌いでいたとのことですが、あるとき、1週間徹夜なしで作業することを試してみたところ、作業がはかどり、夕方に帰っても十分仕事が間に合うことが証明されました。そこで仕事の仕組み化を実現し、9-17時で働くスタイルを確立したとのこと。
この結果、次のようなサイクルが確立。
規則正しい生活になった
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アシスタントの病欠が減った
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やめないで長く続ける子が増えた
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技術が蓄積されて作業が早くなる
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さらに効率化して作業できるようになる
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新しい仕事を覚える
上手く循環しているのがわかりますね。
限られた時間の中で集中し、締め切りを守って結果を出すことが重要なのがわかります。
一日の終わり(目標)を明確にすると、それを意識して、だらだら作業することがなくなりますからね。ぼくも、ブログ記事を書くときは、いつまでに書き終えるのかを明確にするようにしています。そうすることで、その時間は集中でき、なんとかその期限内で形にしようというモチベーションが働くるので、非常に効率的です。もちろん、その期限内では完全には終わらないこともありますが、それでも漫然と書く場合と比べ、かなりスピーディに作業できます。
今では目の前に時計を置いて、この作業は何時何分までに完了させるのかをイメージしてから作業にとりかかるようにしています。そして、時間が大幅にかかったときには何が時間をとったのかを必ず見返すようにし、次回の作業に活かすようにしています。
あと休憩時間もしっかり確保することが重要ですね。休憩なしでぶっつづけで作業しても効率は上がりません。しっかり休みを取る必要があります。その場合も、「これだけ作業したから休もう」というながら休憩でなく、「この時間になったら休憩を取る」とあらかじめ決めておけが、休憩前の作業の集中度が高まります。
「小さなテーマ」で空席になっているところを探す!
あと、この本で非常に印象に残ったのが、テーマの選択方法。漫画で何が重要かというと、やっぱり扱っているテーマですよね。どれだけ絵が綺麗でも、テーマが面白くなかったら、読み進める気になりません。
そういう意味で、従来の作品とは違う、ひとひねりしたテーマが必要。「おっ」と思わせるテーマでないとダメです。
確かに、子供が大金を投資で運用する/戦艦大和の建造費がいくらなのか、というのは、ちょっと聞いただけでも、面白そうと思いますよね。
三田氏によると、多くの人が「大きなテーマから入りたがる」とのこと。それを逆打ちで、針の穴ぐらいに狭いところにテーマを絞り込んだ方が、面白くなるんだそうです。
たとえば、「投資」という大きなテーマではなく「中学生が大金を投資で運用する」という方が具体性があって面白そうですよね。
あと、「空席になっているかどうか」も重要。他の人がやっていることを後追いしても、相当努力しないと注目を集めません。
これってブログも同じですよね。他のブログのPV(ページビュー)が凄いからといって、そのブログをそのまま真似ても二番煎じのため、注目を集めることはありません。重要なのは最初は真似であっても、そこからどのようにして独自の切り口を構築していくか。
それには、とりあえずやってみることです。やってみて足りないところ、駄目なところを修正しながら走り続けるのが一番の近道。
始めたばかりのときは、空席がどこにあるのか、なんていうことはなかなかわかりませんが、しばらく続けてくると、「お、このテーマは新しいな」とか「他ではあまり詳しく取り扱っていないな」ということがわかってくると思います。
まさにそのとおり。まだ勉強が足りないとか、実力不足とか思う前に、とりあえず座ってみて、そこから勉強を始めるなり、地道に努力していけばいいわけです。
そういう意味では、ぼくはこれまで、「まだそこまでの域に達していない」とか「自信がない」とか、なんやかんや理由を付けて、せっかくのチャンスをフイにしてしまっていたな~と思います。そうか、これからは「空席」を見つけたらとりかく座ってみることが大事なんだ。
これもブログを書くときに参考になりますね。最初から自分のスタイルを確立している人はいないわけで、自分がおもしろいと思ったブログのスタイルを真似るというのはありだと思います。そうはいっても、単純なコピーアンドペーストはダメですよ。あくまで、そのスタイル/やり方を参考にして、自分なりのスタイルに落とし込むということです。
ブログにも参考になる記述がいっぱい
この本は、漫画の作り方について言及しているのですが、クリエイティブワークだけでなく、一般的なビジネスにも役立つ考え方が満載です。
ドラゴン桜やインベスターZなどの漫画でも、すごく独特な表現が多く、おそらくは非常にビジネスに長けた人が書いているんだろうな、と思っていましたが、やはりその期待は裏切られませんでした。
具体的なノウハウが書かれているわけではないのですが、効率的に作業するための基本的な考え方が示されており、参考になる部分が多いと思います。すっと読み切れるので、オススメです。